レイアウト製作記 No.33

Nゲージレイアウトの製作記です。作業の進行にあわせて随時更新します。現在は現代東京をモチーフにした「西飯倉」を製作中で、長く懸案だった道路・歩道まわりの工作を中心に据えつつ、並行して既製品ストラクチャーの改造・加工を行っています。

23/4/17 - 日本庭園をNゲージで再現する

年をまたいで半年にわたり更新ができておらず申し訳ございませんでした。きちんと反省し、今後はペースを戻してレイアウト製作を進めてまいります。さて直近の課題である日本庭園は、3回にわたる試作で概ねイメージしていた姿に近づいた一方、既存のスペースに押し込むことの難しさも感じており、いったん独立したヴィネットの形で結実させようと思います。



ヴィネットのサイズは既製の写真立てに合わせた六切り(203×254mm)とし、実在の池泉回遊式庭園(東京白金の八芳園庭園)をモデルとして、大きすぎるところ、手に余るところは適宜デフォルメしていきたいと思います。



地形は2mm厚スチレンボードを切り出し、瞬間接着剤で積層しました。もっともこの後のテクスチャー調整を考慮しても2mm厚のみではちょっと解像度が低すぎるので、適宜斜面がなだらかになるよう1mm厚を追加しています。



びっしりと並ぶ乱杭は直径0.75mmプラ丸棒を5mm長に切り出し、マットメディウムで接着して表現しました。



刈り込みもスチレンボード(1mmおよび2mm厚)の積層です。コンクリート部分は0.4mm厚プラ板、階段はEvergreenのsidewalk、庭園を彩る石はちょうど15年前にNo.5で購入した光栄堂のレイアウトストーンです。



水辺のあずまやである水亭は0.4mm厚プラ板と丸棒、half roundプラ棒でスクラッチしました。特徴的な丸窓は直径10mmのポンチで開孔しています。茅葺き屋根は形状を簡素化して0.4mm厚プラ板で製作後、薄く伸ばしたマットメディウムでスタティックグラスを接着してお気軽に表現しました。



地形は「作り方」通りにモデリングペーストで整地の上、小石・石・岩を追加します。まずは池の周縁部にマットメディウム水溶液を塗り、モーリンのクラフトサンドホワイト(0.1-0.3mm、ついで0.3-0.6mm)を固定、次に光栄堂のレイアウトストーン(大)の岩をマットメディウム原液で接着、最後に石としてモーリン製Rストーン「幹線」N/HO/O用をマットメディウム水溶液で固定しました。
水亭や橋石など表面が平らに加工された石は、天然石ではなく2mmスチレンボードを2枚瞬間接着剤で重ねた上で切り出し、側面をモデリングペーストで目止めしました。



塗装に移ります。地面はエナメル塗料のダークグレー、フラットアースをかなり薄めて筆塗り。池は乱杭や石も含めて底面を同じくエナメル塗料のバフ・フラットホワイトを混ぜて筆塗り。岩や大きめの石はフラットホワイトとミディアムグレイをメインに、少量のダークグレイを加えたもので筆塗りしています。



刈込は二段階で施工します。まずプラッツ製「草地用パイル(日本の若草)」とアモ製「春の若葉」のスタティックグラスを2:1でブレンドし静電植毛しました。
ちなみに写真左手前に見えている砂利敷きは、マットメディウム水溶液(マットメディウム:水=1:3)を地面に塗ったうえでクラフトサンド(0.3-0.6mm・ホワイト)を上から撒き、乾燥後フラットホワイトに微量のミディアムグレイを混ぜたものを筆塗りして表現しました。



ついで上から光栄堂製「情景職人(春の草原色)」と茶こしで濾したモーリン製「カントリーグラス(ライトグリーン)を1:1でブレンドしたものを撒いて葉を表現しました。



水の表現は試作時同様KATOのディープウォーターを2層に分けて施工します。1層目の着色は波音カラーモスグリーンを2.5滴/15mlとし、約20mlを注ぎ込んだものの、全体に行き渡らせようとして若干注ぎすぎました。少量ずつまんべんなく行き渡らせる工夫が必要ですね。



ディープウォーターの第一層目が硬化した後、試作通りEvergreenの直径0.75mm丸棒からスクラッチした錦鯉を布用クリヤーで固定しました。試作時の赤に加え、ジャーマングレイを爪楊枝でかすれ気味に小さく乗せてています。



第二層目のディープウォーター(無着色)を流し込み、硬化した状態です。一層目を注ぎすぎた関係で量を減らしたのですが、今度は量が足りずに全体に行き渡らず水面に段差ができてしまいました。深さを出せなかったため、錦鯉を水で覆いきれなかったのも反省点です。
仕上げのアクセサリーに移ります。縁台は0.25mm厚プラ板切り出しでスクラッチし、フラットレッドとバフを混ぜたエナメル塗料で筆塗りしました。刈込と砂利敷きの境界の丸太は直径0.75mm丸棒を切り出し、バフを筆塗りしたのみです。樹木はアカマツのような背の高い木を追加しようと考えていましたが力尽きてしまい、既存の街路樹流用で済ませました。



こちらで完成です。木は低すぎる上に数が全然足りませんが、ないよりは良いと言ったところでしょうか。庭園の見所のひとつである雪見灯篭は、スクラッチに挑戦したものの脚の造形に難儀し、最終的にはオミットしています。

22/11/03 - 日本庭園試作(3)

日本庭園の試作の続きです。前回の水面に続き、まずは刈込の表現の試作です。


(1) アモ製スタティックグラス「春の若葉」とプラッツ製「草地用パイル(日本の若草)」を1:1でブレンドし静電植毛したもの。
(2) マットメディウム水溶液を塗り、茶こしで濾したモーリン製「カントリーグラス(ライトグリーン)を指で散布したもの。
(3) (1)の静電植毛が乾燥後、マットメディウム水溶液を塗って(2)を上から指で散布したもの。
このうち(3)を採用したいと思います。

この機会にアモの新製品、スタティックグラス「春の若葉」を簡単にレビューします。タケダ製「ジオラマ芝生パウダー」に近い軟らかめの材質で立ち上がり性能はイマイチ、繊維の太さもバラツキがあるものの、緑の濃さが適度で鮮やかすぎない良い黄緑色をしています。色合いとしては、株状態で国内流通しているミニネイチャー春を思わせる色合いです。

さて水面表現についてはほぼ狙い通りで満足しているのですが、改めて試作を行います。とはいえさすがにフルでもう一度お付き合い頂くわけにはいかないので、前回試作からの変更点に絞ってご紹介していきます。


前回はモーリン製のRストーンのO・HOを使いましたが、今回はNとHOをメインにOをアクセントに使用し、全体の細密感を上げました。


またディープウォーターの施工において、気泡はどうしても少しは入るものですが、特に発生しやすい大きめのスキマには予めジェルメディウムを盛って乾燥させ、スキマ埋めを行いました。


ディープウォーターは前回同様2層に分けて施工し、今回は波音カラー(モスグリーン)を1層目は3滴/15ml、2層目は2滴/15mlとしました。色の濃さはちょうどよいくらいですが、塗料色からイメージしていたよりも茶が強く淀んだ色に仕上がりました。

最後に、先月プラッツから発売された「ターフ」(Noch製「フロック(flock)」)を試してみました。ウッドランドのナノプランツが暗く濃い色だけなのに対し、「新緑(light green)」「緑(medium green)」のような明るい色がラインナップされており発売を楽しみにしていました。


しかし実際に使ってみると、「水に青系の染料が溶け出す」という致命的な欠陥があることが判明。写真はマットメディウム水溶液で固着したことにより染料が溶け出し、青の染料が周縁部に固まった状態です。溶け出し自体は事前に水に浸して染料を落とすことで対策できなくはないものの、そうした後の色は製品色からは程遠くなり、使用機会は限られそうです。

22/08/15 - 日本庭園試作(2)

日本庭園の試作第2弾です。試作第1弾は色調をはじめツッコミどころ満載でしたが、なかでも紺色ベタ塗りで庭園感ゼロだった水面について、改めて試作を行います。



地形は前回同様、スタイロフォームに2mm厚スチレンボードをカットして瞬間接着剤で積層、表面は「作り方」通りに地面表現しています。池の底面は上流部分を2mm厚スチレンボードでかさ上げし、カッターで傾斜をつけてモデリングペーストでならすことで高低差を設けています。本試作においては、乱杭の表現は省略しました。



次に池の石と岩の表現です。
・まず小石としてモーリンのクラフトサンド ホワイト(0.1-0.3mmおよび0.3-0.6mm)をマットメディウム水溶液で固定しました。
・小石の固着後、岩を表現するために光栄堂のレイアウトストーン(大)にミディアムグレイ:白=1:1に若干のダークグレイを加えたものを筆塗りし、マットメディウムで固定しました。
・最後に石としてモーリン製Rストーン「幹線」のO用・HO用をマットメディウム水溶液で固定しました。



池の底面の塗装です。石や岩も含めてバフ・フラットホワイトを混ぜたエナメル塗料で筆塗りし、深さのあるところはバフ単色塗りで色を濃くしています。一部フラットアースも少量混ぜて具合をみてみましたが、庭園の池にはちょっと赤茶が強いようです。



水の表現にはレジン素材のKATO(Woodland Scenics OEM)の「ディープウォーター」を使い、2層に分けて施工します。少量使用のため付属の目盛りシール付きカップは使わず、まずは概算の比重を求めました。A液は比重1.2、B液は比重1でした。(ご覧の通り少量を家庭用スケールで測って出した数字ですので、量を増やす際は改めて計算されることをお勧めします。)



A液とB液は容積ベースでは2:1で混合するので、比重計算に基づき今回は12g:5gで混合しました。一層目はこのあと、KATO「波音カラー(モスグリーン)」を一滴追加して着色しています。



断面はお手軽にマスキングテープで囲んで一層目のディープウォーターを流し込み、約1日経って硬化したところです。若干量が流れ出ていますね。

二層目を流す前に、池を彩る紅白の錦鯉を追加します。Evergreenの直径0.75mm丸棒を5mm長に切り出し、デザインナイフで削り出して指でごく軽く曲げてスクラッチしました。塗装は白はプラ成形色そのまま、紅色部分は粘度の出やすいアクリル塗料を使い、フラットレッドにフラットイエローを加えたものを爪楊枝で小さく乗せて表現しました。最後に細い削りカスを後端部に接着し、尾びれを表現しています。



一層目同様にA液・B液を混合し、着色なしとした透明のディープウォーターを二層目として流し込み、硬化させた状態です。断面部分はどうしても盛り上がってバリができてしまうので、このあとデザインナイフで除去しました。

断面のバリ処理を終えた後の状態です。庭園の水にしてはやや透き通りすぎの感はあるものの、フラットアースなしの中央部の色合いはおおむね狙い通りの色調になってくれました。次回は刈込の色調・質感についても手をつけたいと考えています。

22/07/18 - 日本庭園試作

海辺のリノベ倉庫と住宅街の間はそれなりのスペースがあるのですが、ここに何か見応えのある要素を足したいと考えています。



そこで第一候補として思い立ったのが日本庭園です。小さなスペースですが、できれば中央に池があり、その周りを散策できる回遊式の庭園を作りたいと考えています。



ということで、まずはイメージを掴むための試作です。地形のベースはスチレンフォームのベースにタミヤ製のスチレンボード(2mm厚)を瞬間接着剤で重ねました。表面は「作り方」通りにモデリングペーストで地面を作り、周囲をマスキングしてマットメディウム水溶液を塗ってモーリンのクラフトサンドを均一に施工して玉砂利を表現しました。水面部分はひとまず0.4mm厚プラ板を固定しています。



1mm厚のスチレンボードで池に向かって傾斜していく地形を作りました。タミヤ製のスチレンボードのうち1・2mm厚は一般的なサンドイッチ構造ではなく単なる発泡スチロールの薄い板なのですが、地形製作という点ではかえってこの方が使いやすいと思っています。同時に直径0.75mmのプラ丸棒を2mm長に切り出し、水面のプラ板に接着して乱杭を表現しています。



基礎を作った斜面部分にモデリングペーストを盛り、メイクスポンジで表面を荒らしました。この時点では階段状の基礎が見えてしまっており、もう一段盛ればより滑らかな斜面にできそうですが、どのみち大部分は刈込で覆ってしまうのでこれで良しとしました。



玉砂利部分をマスキングし、「作り方」通りにフラットホワイト:ミディアムグレイ=1:1+バフ少量で基礎塗装を行いました。しかしグレーが濃すぎて玉砂利とのコントラストも強すぎ、これは失敗でした。



地面の塗装です。「作り方」通りに地面をフラットアース・ダークグレイのエナメル塗料を薄めたもので塗りました。ついでに水面もクリアーブルー・濃緑色で筆塗りしました。水面の色も青が強すぎるので、もう少し緑・茶を加え、明るめにするとよいかなと思っています。また少々塗料を薄めすぎたようで、毛細管現象で乱杭のスキマに水面の色が入ってしまったのも反省ポイントです。



地面下地も「作り方」通りにジオラマパウダー黄土とナノプランツミックスグリーンを茶こしで濾したものを撒きました。



今回難儀したのは刈込の表現です。まずマットメディウム水溶液を塗り、アプリケーターでグラスセレクション(グリーン)を静電植毛しました。



乾燥後、固着したグラスセレクションの表面にマットメディウム水溶液を塗り、ジオラマパウダー薄緑を散布しました。古典的なおがくず素材ですが粒度はなかなか細かく、繊維素材と組み合わせた質感も悪くないと思っています。もちろん色調については大いに改善の余地があり、緑が強く黄緑が鮮やかすぎるので、今後の検討課題です。



水面はリキテックス製グロスポリマーメディウムを筆塗りしてお手軽に表現しました。



最後に街路樹用に製作している樹木と、光栄堂のレイアウトストーンLS-02、前回製作した人力車を組み合わせて、試作はひとまず完了です。本番に向けては全体の色調の改善に加え、今回直接地面に行った緑化表現を、ツツジ等の刈込を表現するために1mm厚スチレンボードで造形の上で行う必要があると考えています。



最後に、Peco製の2軸貨車が1両だけ入線しました。白ラインの入った車輪はちょっとお上品すぎるのでKATOの黒染め車輪に換装し、ついでに連結器をTN化しました。

22/03/27 - 宿題着手 & 人力車

今回は街路樹の地面の試作からはじめ、主に前年より課題として残っていた作業の続きを行います。

素材にはEvergreenの0.25mm厚プラ板を使用し、表面を軽く荒らした上でモデリングペーストを塗り、「作り方」通りにフラットホワイト・ミディアムグレイ・バフでエアブラシ塗装→フラットアース・ダークグレーのエナメル塗料筆塗りで仕上げました。固定穴の位置や周囲の囲いなど詰めるべき部分はありますが、質感や色合いはこれで良さそうです。

次に最上階にミニ「例のプール」を設置した建物コレ「駅前近代ビルB」について、0.5mm厚プラ板で「電飾キットE」のLEDユニットを覆い隠すハコを作りました。

フタをして電飾をONにしたところです。光が明るすぎるという課題に対しては、半透明ブラウンスモークの塩ビ板を2枚重ねて接着することで、色合いを保ちながら光度を調整しました。今後塗装して仕上げます。

また同じく建物コレ「倉庫B」を再塗装したリノベ倉庫のウッドデッキは、あとから製作した人道橋の板張りの色合いに合わせて塗り直しました。フラットホワイトとバフを基調に、フラットアース・デザートイエロー等を筆塗りしています。

次にちびちび進めている鉄骨高架橋の塗り直しです。鉄骨部分に続きガーダー部分をクリーム色1号で吹き付け塗装したあと、バフ・フラットアース・NATOブラウンを混ぜて調色した薄めの錆色でウェザリングしました。次は線路ですね。

最後にお手軽価格につられて、さんけいみにちゅあーと「人力車」を衝動買いしてしまいました。

ルーフは付属パーツをベースにタミヤパテで整形し、本体をフラットブラック、車輪をクロームシルバー、椅子はフラットレッド(黒から立ち上げ)で塗装しました。タイヤはエナメル塗料のフラットブラックで筆塗りして表現しています。アクセントとして、足を置く部分はバフ→レッドブラウン・クリヤーオレンジで筆塗りして、艶のある木材をはめ込んだ仕様にしています。椅子はルーフの影になることもあり、赤が暗すぎますね。

22/01/12 - 街路樹の試作

年末にかけて忙しく更新ができておらず申し訳ありませんでした。本年初の作業は街路樹の試作です。

これまで街路樹の樹木はオランダドライフラワーとファインリーフフォーリッジで製作してきたのですが、幹がかなり華奢なことが気になっていました。


そこで、引き続きオランダドライフラワーを枝として使用しつつ、幹には銅線素材である光栄堂の「トゥリーク」を利用して試作を行います。今回は5cmと3cmの2種類を試してみました。



トゥリークをねじって形を作ったあと、タミヤパテを原液で塗ることで下地塗装を兼ねた表面処理としました。またレイアウトへの固定用に直径0.6mmの洋白線の脚を瞬間接着剤で追加しました。



オランダドライフラワーの枝を瞬間接着剤で接着し、フラットホワイト・ミディアムグレイ・フラットアースを混色してエアブラシで全体に吹きました。さらに薄めたフラットアースのエナメル塗料を筆塗りして色合いを調整しています。



葉には、ミニネイチャーの「ブナの枝葉(夏)」を使います。ダークグレーの繊維の枝に、繊維素材と目の細かいスポンジからなる葉を組み合わせた質感のよい製品です。欲を言えばもうちょっと枝部分の主張が弱いとより使いやすくなるかなと思います。

ハサミで細かく裁断した上で、エアブラシでフラットホワイト・フラットグリーン・イエローグリーンを混色したものを吹き付けて彩度を落ち着かせます。



最後に従来同様、コニシ「布用ボンド」で葉を接着して完成です。

歩道に直径0.6mmの穴をドリルで開孔して仮配置してみました。今後、木の植わっている土部分の表現も検討する予定です。

最後に、駅前のバス停について1mmのICテープで枠取りをするとともに、さかつう取扱のこばる同等品「道路標示9」インレタを転写しました。ただ都心部の実物を見ると、「バス停」と横書きのケースが多いような気もしますね。
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